ある体験談


突然インスリン注射が必要といわれ、悩み、「糖尿病サロン」にも相談にこられました。インスリンをはじめてうちだした体験です。
                      [平山純二]

糖尿病は甘くない
                M   



糖尿病発症


 身体の変調に気がついたのは、30才の秋でした。何故か異様に喉が渇き、車で移動中に自動販売機を見つける度に、炭酸飲料を買って飲んでいました。しかし、飲んでも飲んでも喉の渇きは収まらず、車の中は、空き缶だらけ。たまたま、顧客でもあった内科の医師との雑談の中で「先生、僕、最近喉が乾いてしょうがないんやけど、どっか、悪いんやろか」と質問したところ、「明日、いっぺん外来で診たろ」との事で、翌日、絶食で検査に向かいました。検尿、採血、待つこと1時間。呼ばれて、診察室へ入ったとたん、「血糖値 300 もあるで、りっぱな糖尿病や・・」その日から、血糖降下剤のお世話になることに・・・
 その後は、栄養士さんからの食事指導、糖尿病教室への参加、運動量(万歩計)のチェック等々、月1度の病院がよいが始まりました。その当時、空腹血糖が140台から170台でした。人よりは高いものの、これぐらいならいいか、眼底検査も半年に1回受け異常なし、血圧その他異常なし、合併症なんて俺には関係ない、俺の血糖値は、これで正常なんだ・・ぐらいにしか思っていませんでいした(ただ、先生の手前、月一度の検診は欠かしませんでしたが)。

35才にしておたふくかぜに・・・


 今年の暑い夏の事、お盆休みをずらして20日過ぎから休むつもりが、18日に気づいた右頬のはれと痛みが、19日には両方の頬にひろがり、体温39度オーバー。そのうち睾丸まで腫れだし、一時は手拳大に腫れ上がり、座薬なしでは眠れないほど。結局、熱と腫れが引くまで8日間かかりました。今思えば、それが糖尿病を悪化させた原因だと思うのですが・・・
 9月初めの検診時、血糖値が異様に高いから薬を変えますと言われ、次回10月まで様子を見ました。10月に入りブドウ糖負荷試験等を受け、「ほとんどインシュリンが出ていない」との診断。「インシュリン注射で一時期、膵臓を休ませよう」との医師の言葉に ”自分の身体はもう、そんなに悪いのか、でも、先生は一時期って言ったぞ、一生とは言わなかったぞ”
心の中で、インシュリン注射に対する不安と、恐れが渦巻きました。
「インシュリン打つようになったら終わりやで・・・」
「糖尿病も重症になると先が見えるでなぁ・・・」
等々、さんざん脅かされていた状態が、すぐ目の前にあるのです。すぐベットを用意するからと言われても、仕事を理由に、月末まで逃げる始末。糖尿に利く漢方薬、青汁、周りの人はいろいろ勧めてくれました。ただ残念なことに、勧めてくれた人が試したものはひとつもなく、「知人がこれを飲んで良くなった」、とか、「評判がいい」、とか実際にその人が身をもって糖尿病が治った、と言うものではありません。それでも、頼りたい気持ちはありましたが、入院予約まで時間もなくたいていそれらは高価で、続けて服用が条件ですからあきらめました(インターネットで「糖尿病サロン」を知り相談したことも、入院、インシュリン注射に踏み切れた大きなきっかけです)。
入院期間は、無理言って2泊だけ。朝8時に病室に入り、いきなり採血、5分後再度現れた看護婦さんの手には小さな注射器。
「血糖値高いんで、今からインシュリン打ちますね、はい、肩だして」
自分としては、清水の舞台から飛び降りるぐらいの悲壮感で、ある意味では、ガンの告知を受けて手術場に向かうまえの患者ぐらいの心境で臨んだ入院、インシュリン注射。 なんと、あっけなく、あっけらかんと終えたインシュリン初体験でした。

 採血、注射、採血、注射、楽しみは食事だけ。しかも、これまでの食事療法の甘さがモロに出て、いつも空腹。つらい、久しぶりにつらい2日間でした。この間、薬剤師からインシュリン自己注射の打ち方を教えてもらい(実習はなし・・・)注射器(ノボペンという・・)を握りしめ、いよいよ本格的にIDDM患者としての自覚を深めた次第です。

 その後、精神的には落ち込んだり、家族にあたってみたり、不安定な時期もありました。初めて自己注射をする自分より、もっと痛そうに見つめる妻の表情にやるせなくなったりもしました。自己注射を始めて10日を過ぎて、やっと慣れたかなって思います。このまま一生うち続けるのか、いつかまた、自分の膵臓が働き始めて注射と縁が切れるのかわかりませんが、「足りないホルモンを足してやるだけ」と割り切って、「おかげで規則正しい食生活が送れる」と前向きに考えて行こうと思います。
 ただ、若いからと無茶を続けているたくさんの方、自分だけは大丈夫と、無茶を無茶と感じないで無茶をしていると、結局高いつけを自分自身の身体で支払わなければならなくなりますよ。私の体験から得た教訓です。


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