最近「生活習慣病」という言葉をよく耳にします。高血圧症、高脂血症、糖尿病などの慢性の病気は「成人病」と呼ばれていましたが、最近は子供にも発症するし、病気に生活習慣が大きく関係しているため、数年前より「生活習慣病」と呼ばれるようになってきました。これは「生活習慣を改善すればもっと減らせる病気」という意味でもあります。
日本成人の死亡原因の1位は「がん」です。2位の心疾患(心筋梗塞など)や3位の脳卒中(脳梗塞など)とともに、「がん」も生活習慣にかなり関連があります。タバコによる肺がんはもちろん、大腸がんも脂肪の摂りすぎなどのためにどんどん増えています。
国も「健康日本21」と称して、2010年までに達成したい目標を食生活、タバコ、糖尿病など9つの領域で70項目選びました。次回からはこれらの目標や病気の情報等もご紹介する予定です。もちろん、病気になれば主治医と相談することもお忘れなく。
肥満は万病の元であることはよく知られていますが、同じ肥満でも脂肪の分布が大事なのです。お相撲さんは肥満体ですが皮下脂肪が大部分です。若い女性もこのタイプです。それに対して、中年太りの肥満は内臓脂肪型肥満といって腸の間などの腹腔内に脂肪が多くたまります。
内臓脂肪型肥満はおなかだけが飛び出していて下半身は結構やせています。太鼓腹といわれる体型です。悪いことに、このような内臓脂肪型肥満は高血圧症、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病のリスクが高くなります。ひいては動脈硬化を引き起こして心筋梗塞などにもなりやすくなります。
見た目でいえば、皮下脂肪型は「洋ナシ型」、内臓脂肪型が「リンゴ型」といえます。両者の正確な判定はCT検査が必要ですが一般的ではありません。通常はウエスト/ヒップ比でもある程度の判定はできます。男性なら1.0,女性なら0.8以上あればリンゴ型肥満ですから要注意です。さあ、あなたの体型はドッチ?
一般的には体重の重いヒトが体脂肪率も高いのですが、時には肥満度が正常範囲内でも体脂肪率が高い場合があります。このようなヒトは筋肉に較べて脂肪が多い「かくれ肥満」と言えます。見た目以上に肥満体質ですから生活習慣病の危険性が高いのです。食べ過ぎ、運動不足などに注意してください。ただし体脂肪率計は誤差もあり、朝と夜でも値が違います。測定はいつも同じ時間帯に行ってください。
暑くなってくると喉が渇いてジュースがおいしい季節になりました。でも注意してください。ジュースの飲み過ぎは肥満の原因だけでなく、もっと恐い「ペットボトル症候群」をひきおこすこともあります。
ペットボトル症候群というのは面白い名前ですが、1日にペットボトル何本ものジュースを飲んで、ついに意識までなくなる病気です。若くて太っているヒトに多いのですが、喉が渇いてジュースをガブガブ飲むと血糖値が上がって、もっと喉が渇いてきます。本人が「こんなに水分を摂っているのにどうして喉の渇きがとれないのだろう」と思ってさらにジュースを飲み続け、1日に1.5リットルのペットボトル何本も空け、遂には高血糖性昏睡となって倒れてしまうのです。
喉が渇いてもできるだけジュースを控えてお茶やミネラルウォーターを飲むようにしてください。スポーツドリンクも糖分が含まれていますからほどほどに。
コレステロールというと悪者のイメージが強いですが、本来は体にとってなくてはならない物質です。もし体の中のコレステロールが少なすぎると、血管がもろくなって裂けやすくなります。以前に東北地方などで脳卒中が多かった理由の一つがこれです。
ところが最近は食生活が良くなりすぎたため高コレステロール血症が問題となってきました。高コレステロール血症は動脈硬化をおこし、脳梗塞、心筋梗塞などを引きおこす原因になります。そのためコレステロールを多く含む食材は特に悪いものとみなされがちです。
でも炭水化物などを摂りすぎても血中のコレステロールは増えます。これは体中のコレステロールの半分以上は炭水化物などから体内で合成されるからです。いくら肉や卵、油などを控えてもご飯やお菓子をいっぱい食べたら全く意味がありません。要は何を食べるにしても食べ過ぎず、肥満にならない事が一番の動脈硬化予防法になります。
悪者扱いされることが多いコレステロールですが、血中を流れるコレステロールには良いコレステロールもあります。健診でもよく検査するHDLコレステロールが善玉コレステロールと呼ばれているもので、血管壁などの末梢組織からコレステロールを取り出して肝臓に運ぶ働きをしているのです。
総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いた残りの大部分が悪いコレステロール、一般に悪玉コレステロールとよばれるものです。悪玉コレステロールはHDLコレステロールとは逆に、肝臓から血管壁などの末梢組織にコレステロールを運ぶのです。
本来は血管を強くするために必要なものなのですが、多すぎると動脈硬化をおこすため、悪玉といわれるようになってしまいました。健診で総コレステロールが多少高くてもHDLコレステロールが高ければあまり心配ありませんが、総コレステロールがあまり高くなくてもHDLコレステロールが低すぎると要注意です。
健診などでコレステロールなどが高いと聞かされると、大抵の人はダイエットする気になります(何日この気持ちが続くかは別にして、、、、)。ダイエットとしてまず朝食を抜こうと考える方も多いと思います。でも待ってください。朝食を抜くのは逆効果です。
空腹の時間が長く続くと、体は「エネルギーを大切に使わなければ」と思いこみ、栄養を体に最大限蓄えようとします。このため肝臓で中性脂肪やコレステロールがたくさん作られ、結果的に血中のコレステロールも上昇します。朝に摂った栄養は昼間に運動や頭を使うことによって利用されますが、夜に摂った栄養は体に貯まるばかりです。また、脳がうまく働くにはブドウ糖が必要ですが、朝食を食べなければ頭も回転せず、ぼーっと1日を過すことにもなります。
やはり朝食を含めて3食ちゃんと食べ、夕食は控えめに。但し回数が多ければいいというものでもありません。間食、夜食と食べる量が増えると逆効果ですよ!
高コレステロール血症が見つかった場合、治療の基本は食事です。食事療法もせずに薬に頼るのは本末転倒です。食事療法の基本はまずカロリーをとりすぎない事。もちろんコレステロールを多く含む食品(例えば卵、レバーなどの内臓)を食べ過ぎない事も大事ですが、糖分などをとりすぎても血中のコレステロールは上がってきます。
要は「腹八分目」にして肥満にならないことです。おかずは肉よりも魚を中心にした方が良いです。魚脂には動脈硬化を防ぐ働きがあります。これはEPAやDHAなどという不飽和脂肪酸が多く含まれていて、血中のコレステロールを胆汁へ排出する働きもあります。
魚脂は冷えても白く固まりません。一方、豚や牛の脂のように冷えて白く固まる脂は動脈硬化をひきおこし易いです。オリーブ油も不飽和脂肪酸が多く含まれ、動脈硬化を防ぎます。地中海沿岸の人達はオリーブ油を多くとるために心筋梗塞が少いという報告もあります。
一方、不溶性食物せんいは便秘を防ぎ、腸での悪い細菌の増殖をおさえて大腸ガンも予防する働きがあります。野菜は1日に300g以上は食べるようにしましょう。生野菜でこれだけの量を食べようとすると大変ですが、温野菜として食べると多くの量を摂ることができます。
食物せんいは熱で殆ど変化しません。特にごぼう、かぼちゃ、ほうれん草、大豆(納豆)などには多く含まれています。果物にも多く含まれています。ミカンもぜひ袋ごと食べましょう。
植物油や魚の油などに多く含まれる不飽和脂肪酸は動脈硬化を防ぐ働きがありますが、酸素と結びつきやすいという悪い性質もあります。ちょうど鉄に酸素が結びついてサビが出るようなものです。酸素とひっついた脂肪酸を過酸化脂質といいます。過酸化脂質は体を痛めつけて動脈硬化や老化を引き起こします。過酸化脂質は皮膚も痛めつけてシミやシワを増やします。
それでは過酸化脂質を作らせないためにはどうしたらよいのでしょうか。酸化を防ぐ物質があるのです。例えばビタミンE、ビタミンC、ベータカロチンなどです。ビタミンEはアーモンドやナッツ類に多く含まれていますが、植物油にも多く含まれています。ビタミンCやベータカロチンは野菜や果物に多く含まれています。緑茶もポリフェノールという物質が含まれており、酸化を防ぎます。老化を防ぐためにもぜひこのような物質をとるようにしましょう。
中年以降になると血中コレステロールが高いひとが増えてきます。40歳台では血中コレステロールは男性の方が高いのですが、50歳台以上になると急に女性の方が高くなります。これは、閉経によって女性ホルモンの働きが低下する事と関係があります。
女性ホルモンが減ると善玉のHDLコレステロールが低下し、悪玉のLDLコレステロールは逆に増えます。LDLコレステロールが増えると血管壁の中にコレステロールが貯まり過ぎて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを発症する危険性もぐっと高くなります。閉経後に心血管病の危険率は2倍になるといわれています。
今までコレステロール値が低かったからといって安心せず、毎年検診を受ける事が大切です。血中コレステロールが240mg/dlを超えるようなら何らかの治療が必要です。肥満の場合はもちろん減量が必要ですが、食事、運動をがんばってもコレステロールが低下しないときには飲み薬が必要な事もよくあります。
高コレステロール血症などというと中年以後の病気という印象がありますが、近年は小児でも血中コレステロールが上がってきています。これは食事に洋食や中華料理が多くなったこと、おやつにも油菓子が多くなったことも原因と思われます。その上、子供も昔に比べて運動不足状態が続いています。
最近ではアメリカの小学生よりも日本の小学生の方が血中コレステロールが高いという報告もあります。このままでは大人になったときにすでに動脈硬化になっている可能性もあります。まず肥満にならないような食生活が大事です。ただし、コレステロールは本来は体を作る大事な物質ですから、過度に制限すると逆効果です。
食物せんいを多く含んだ食事を食べさせてあげてください。また、まれですが遺伝的にコレステロールが高い子供もいます。両親がコレステロール値が高い場合には子供さんも早い目に血液検査をすべきです。
植物油というと動物の脂肪に比べて健康的なイメージがありますが、体に良くない働きをする成分も含まれている事がわかってきました。少し前までは天ぷら油やマーガリンに多く含まれている「リノール酸」はコレステロールを下げる働きもあり、どんどん摂った方が良いと言われてきました。ところが最近はむしろリノール酸の摂り過ぎが問題になってきました。
リノール酸を摂り過ぎると血管がつまりやすくなったり、アレルギー反応がおこりやすくなったり、癌の進行も早まることがわかってきました。ほとんどの種類の植物油にはリノール酸が多く含まれていますが、シソ油などの一部の植物油には「αリノレン酸」といって、リノール酸の悪い作用を抑える働きがある成分が多く含まれている油もあります。ただしαリノレン酸は酸化されやすいという欠点もあります。
植物油は高カロリーでもあり、生活習慣病を防ぐためにはあまり摂りすぎないようにした方が良いでしょう。
以前にも魚の油が良いとご紹介しましたが、もう少し詳しくご紹介します。魚の油にはEPAとかDHAという名前の油の成分が含まれています。EPAは血中のコレステロールや中性脂肪を下げるだけでなく、血液をサラサラにする働きがあります。DHAは脳細胞の中まで入り、記憶力や学習能力を高めるともいわれています。脳梗塞も予防します。
EPAはイワシやサンマ、サバ、マグロなどの背の青い魚の油に多く含まれています。DHAも同じように魚に多く含まれていますが、特にマグロの目玉の周りなどに多く含まれています。ウナギにも多く含まれています。EPAとDHAはアレルギー反応やガンを抑える働きもあります。魚を多く食べていると突然死が少ないという報告もあります。また、日本人が賢いのは魚を多く食べているからというイギリス人の研究もあったようですが真偽の方はどうなのでしょうか。健康のためにもなるべく旬のおいしい魚を食べましょう。